海陽町移住体験施設「海陽町ハウスビレッジ」 Kaiyo House Village
地域・環境と向き合う
近年、田園回帰の機運の高まりによって、海陽町では都市部からの移住希望者が増えている。
一方で、移住希望者を受け入れるための住居整備が整っておらず、人口流入の障壁が問題となっている。そこで町が保有する築40年になる小学校の職員住宅を、
移住体験者向けの住宅として改修する整備計画が求められ、公募プロポーザルを通してわれわれの案が選定された。
敷地には、木造平屋の2戸長屋が3棟建っており、全体にわたって老朽化が激しく、基礎土台や床下周りでは腐朽が進み、天井では雨漏りの箇所が多く見られた。
また西側には海部川が流れ、東側には豊かな田園を望めるが、それらを覆い隠すような垣根や雑草が鬱蒼と茂っていた。
本計画では、こうした暗く閉鎖的な居住環境を大きく改善し、多様な世帯のライフスタイルに応じて順応できるように、柔軟性のある間取りと周囲環境と
ダイレクトに向き合える開放的な施設づくりを模索した。それにより、移住体験者がスムーズに地域社会に溶け込み、地域住民との共生と協働を通して地域貢献が
図れないかと考えた。そこで既存躯体をスケルトンとし、腐朽した土台や基礎周りは全面的に改修を行ないながら損傷の少ない梁や小屋組みは転用を図った。
柱や壁は平面計画に合わせて変更し、南北方向へと跨いでいた界壁をなくすことで山や川といった周囲環境へと繋げることを目指した。また構造グリッドを
意識しながらもゆったりとした構成を心がけ、間仕切りを設けず建具やカーテンで居室空間を分節し、一体的に活用できる計画とした。
さらに、内外で回遊できる縁側テラスは隣接する住戸の住民同士や地域の人びととの交流をしやすい配置とし、菜園や土間スペースを設けることで
生活環境を住まい手によって自由に彩れるようにした。計画している用途は居住用施設であるが、将来に向けて移住者用住宅として使われなくなった際でにも、
住民達の集会場や高齢者用住宅としても許容できるよう心がけた。近年の移住者に向けての玄関口として機能すると共に地域住民へと還元し、
長く親しみをもち続けられる建築となることを期待している。
所在地 | 徳島県海陽町 / Kaiyo town , Tokushima , Japan |
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用途 | 移住体験施設 |
延床面積 | 90㎡ × 3棟 |
工事種別 | 改修 |
施工 | 前田建設(A棟)/ 坂本設備工業(B棟、外構)/ 野根建築(C棟) |
写真 | 大竹央祐 |
構造 | 片岡慎策 |
受賞 | ウッドデザイン賞2019 林野庁長官賞(優秀賞) |
complete. 2018.03 |